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投稿者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正②

相続開始後・遺産分割前に遺産が使われた場合

被相続人が亡くなったことを銀行に知らせるとお金を引き出すことができなくなるということで、亡くなった後もすぐに銀行には知らせず、その間にATMで預金を引き出すということは、しばしば見かけます。

葬式費用程度であれば、特段問題がないことが多いのですが、中には多額のお金を自分の生活費や借金の返済に充てる相続人がいたりします。

このように、被相続人が亡くなったときにはあったが、今はないものをどう扱ったらいいのか

例えば、被相続人が死亡したときには1000万円あった預金が、遺産分割の話し合いをしようとしたときには400万円になっていたとしましょう。

他の相続人は、元々1000万円あったのだから、1000万円を分けようと思うでしょうが、家庭裁判所の常識は、「遺産分割は今ある財産を分ける手続きだから、今ある400万円を分けることしかできません。もし、600万円はある相続人Aが使い込んだと言われるのであれば、それは直接Aに返せという裁判を別個やってください。」というものです。

家庭裁判所の言うことも一理あるとは思うのですが、別個裁判をするというのは、弁護士費用の負担が大きいという問題があります。そうでなくても、遺産の問題がなかなか解決しないということにもなります。

そこで、今回の改正により、共同相続人の中に相続開始後・遺産分割前に遺産を処分した(典型的には預金を引き出した)相続人がいる場合には、その相続人以外の相続人全員が同意すれば、その処分された遺産があるとみなして遺産分割協議をすることができるようになりました

【写真】4月上旬に内海にある某ホテルから撮影したもの

投稿者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正①

昨年、民法の相続分野の改正がなされました。本格的に改正されたのは、配偶者の法定相続分が2分の1となった昭和55年改正以来のことです。

今回の改正は多岐に亘ります。

そこで、これから何回かに分けて、改正された部分をご紹介します。

なお、改正法の施行時期は、原則として2019年7月1日からです。

遺留分

遺留分の金銭請求化

これまでは遺留分侵害があっても、それを金銭で支払うように請求する権利があったわけではありませんでした。

そのため、不動産のようなモノで遺留分侵害額が補われるということもありえました。

今回の改正で、遺留分侵害があった場合には、金銭請求をすることに一本化されました。

今までの遺留分の権利は、かなり分かりづらく、我々弁護士が説明をするのもかなり苦労していました。

今回の改正により、遺留分侵害があった場合には、遺留分侵害額をお金で請求することができるというように単純化されましたので、一般の方には分かりやすい改正になったといえます。

反面、遺言を書く場合は要注意です。現金・預金があまりなく、遺言で遺贈するとした財産の大半が不動産の場合、遺留分侵害請求がなされると、金銭で渡さなければなりませんので、そのお金をどのように用意するかという問題が生じます。

これまでも同様の問題はありましたが、今回の改正で金銭請求権であると明記されたことを考慮に入れて、遺言の内容を検討する必要があります。

あと、遺留分侵害請求権を行使しても多額のお金がない場合には、話し合いにより、不動産を遺留分を主張する人に戻すことはこれからもあると思います。

実は、遺留分が金銭債権に一本化されたために、相続人同士の話し合いにより不動産を戻すことにするというのは、一種の代物弁済になります。
そのため、不動産を譲渡したことになり、譲渡所得(又は損失)が発生するということです。

この点は、税理士としては、言われてみれば・・・という感じですが、先日行われた税理士会の研修で指摘されるまで正直気が付きませんでした。

遺留分の計算方法の見直し

これはやや専門的な改正事項になります。

被相続人が生前に贈与をしていたときには、それを一部遺留分の算定の上で考慮しなければなりません。

相続人以外の者への贈与の場合は、原則として亡くなる前1年間だけを考慮すれば足ります。

これに対し、親が子に贈与する場合が典型ですが、相続人への贈与は、原則としてこれまでは時期にかかわらず、遺留分を算定するときに考慮することになっていました。

言い換えると、かなり昔の贈与でも遺留分を計算するときに持ち出される可能性がありました。

ただ、子どもが住宅を購入するときに親が購入代金の一部を負担したり、子の借金を親が支払ったりすることは、しばしばあります。

そのため、親が亡くなったときに、姉は住宅を購入するときに1000万円を出してもらったが、自分はもらっていないなどといったことが遺留分の場面で出てきていました。

私も弁護士としてそのように言われたときは証拠があるのかということを尋ねて確認していました。

遺留分を争ったときに、相手から依頼者が被相続人から贈与を受けていると主張されたこともありますが、そのときに主張された贈与がかなり古いものであったため、余りに古い贈与を持ち出されることに違和感を覚えていました。
また、かなり以前のものを主張されても、本人の記憶も曖昧になっていることもしばしばで、遺留分の紛争が長期化する要因にもなっていたと思います。

そこで、今回の改正で、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年前にしたものに限定されることになりました

【写真】3月31日撮影の大高緑地公園の桜

投稿者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

相続に関係する期限

人が亡くなった後は、葬式や四十九日の法事などであっという間に時間が過ぎてしまうものです。

しかし、相続に関係する法的な手続には期限があるものが多いですので、注意が必要です。

以下、平成30年2月10日に亡くなり、相続人はその日に亡くなったことを知ったという前提で説明します(休日は無視します。)。

相続放棄

亡くなった人に多額の借金があり、相続したくないというときは、相続放棄の手続をするのがオススメです。

但し、相続放棄は、相続の開始があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内にしなければなりません。

原則として、亡くなってから3ヶ月以内です。この例では、平成30年5月10日が期限となります。

この期間の延長もできますが、申請をして裁判所が認めてくれなければいけません。

相続放棄の期間を過ぎると、その後、一切相続放棄をすることはできません。

準確定申告

亡くなった人に代わって、相続人が亡くなった人の確定申告をするのを、「準確定申告」と呼んでいます。

準確定申告は、相続開始があったことを知った日の翌日から4月以内にしなければなりません。

この例では、平成30年6月10日が準確定申告の期限となります。

相続税の期限内申告・相続税の納付

相続税の申告・納付は、相続開始があったことを知った日の翌日から10月以内です。

この例では、平成30年12月10日が相続税の期限内申告・相続税の納付の期限となります。

つまり、12月10日までに税務署に相続税の申告書を提出し、かつ、相続税を納めなければなりません。

遺産が多い場合、相続税の納税資金をどのように工面するかという問題や、場合によっては延納や物納を検討しなければならない場合もあります。早めの準備が肝要です。

遺留分侵害額請求

亡くなった人が遺言を書いていたため、相続により取得できる財産が少ないというときがあります。

このような場合に遺留分を主張できるときがありますが、減殺すべき遺贈等があったことを知ってから1年以内です。

相続放棄と異なり、この期間は延長することができません。

何もせず1年を過ぎてしまって、何も言えなくなった人をこれまで何人も見てきましたので、くれぐれもお忘れのないようにしていただきたいです。

自筆証書遺言の検認

亡くなった方が自筆証書遺言を書いていた場合、家庭裁判所で検認をする必要があります。

これは、これまで説明したものとは異なり、厳密に期限は定められてはいませんが、「遅滞なく」検認をしなければならないとされています。

遺産分割

遺産分割はいつまでやらなければならないという期限はありません。

但し、相続税を安くするための特例には遺産分割をしていないと使えないものもありますので、ご注意いただきたいです。

不動産の名義変更

遺産の中に土地・建物があり、誰が相続するのかも決まった場合、その人に速やかに名義変更するのが望ましいです。

但し、不動産登記法上は、いつまでにしなければならないとは規定されていませんので、期限があるかといえば、期限はありません。

名義変更をしないまま亡くなると、次の相続人に迷惑がかかりますので、繰り返しになりますが、速やかに名義変更することが望ましいです。

投稿者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

遺言の作成

【遺言の種類】

遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

 

【自筆証書遺言】

自分で遺言を書く場合の遺言のことです。
いつでも書ける、自分で作成するなら料金がかからないというメリットがあります。
他方、紛失等をするおそれがあることや、検認の手続が必要となる点は公正証書遺言と比べるとデメリットといえます。

 

【公正証書遺言】

公証人に作成してもらう場合の遺言のことです。
作成するのに手数料がかかりますが、原本が公証役場に保管されるので、紛失等のおそれがありません。
また、遺言を書いた人が亡くなった後の検認の手続は不要です。

 

【どちらがいいか?】

自筆証書遺言は、自分で全文を書く必要があります。

しかし、高齢になると、握力が弱くなったり、手が震えるようになったりすることで、多くの字を書くのが難しくなってきます。

そのため、自筆証書遺言は、

① 書く分量が少ないシンプルなものである。
② 字を書くのにさほど不便を感じていない。
③ できるだけ費用を少なくしたい

という場合に向いていると思います。

多少お金をかけてもいいということなら公正証書遺言の方が遺言を自分で書かなくていい分簡単かもしれません。
ただ、公証役場は数が多くなく、自宅から遠い方はそれがネックになることもあるかと思います。