2022年に全国の家庭裁判所で受理した相続放棄の件数は26万497件だったそうです(令和4年 司法統計年報(家事編)22ページ)
その理由別の件数は明らかではありませんが、他に大した財産がなく、空き家となった家を相続したくないというのも相当数あると思われます。
空き家というと、木造のボロい一軒家を思い浮かべる方が多いと思いますが、都市部ではマンションの部屋が空き家になるというケースも多いようです。
さて、相続放棄を検討されている方から、相続放棄をした場合でも空き家の管理責任を負うのかと質問されることがあります。
相続放棄をした場合の管理責任については、少し前に民法が改正されて、次のように規定されています。
この規定は、令和5年4月1日から施行されています。
遺産を現に占有しているかどうかがポイント
これまでは、例えば、兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合で、亡くなった方の自宅に行ったこともないようなケースで、相続放棄をしたときでも、亡くなった方の家の管理責任を負うのかどうかが法律上明らかではありませんでした。
民法の改正により、上記のように、相続放棄をしたときに遺産を現に占有しているときには財産の管理義務があること、逆に言えば、相続放棄をしたときに遺産を現に占有していないときには財産の管理義務を負わないことが明らかになりました。
上記のような、兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合で、亡くなった方の自宅に行ったこともないようなケースでは、相続放棄をした人は遺産の管理責任を負わないと思われます。
管理責任を負う場合はどのような場合か?
逆に言えば、被相続人が亡くなって、空き家となった物件を相続放棄をした人が、相続放棄をしたときに現に占有していた場合には、相続放棄をしていたとしても管理責任を負うことになります。
相続放棄をしたときに空き家となった物件を何らかの形で使っているような場合には、現に占有していると判断される可能性が高いと思われます。
他方、私見ですが、鍵を持っているだけでは、さすがに、現に占有しているとまではいえないと思います。
やっぱりお金が最大のネック
民法の改正により、相続放棄をした人の管理責任が明確化されたことにより、管理責任があるのかどうかを判断しやすくなったという意味では朗報です。
しかしながら、これだけで空き家問題を解決できるわけではありません。
相続人全員が相続放棄をして、空き家が放置されているようなケースでは、相続財産清算人を選任して、売却なり、解体をしないと問題は解決しないわけですが、相続財産清算人の選任や建物を解体するには実際には相応のお金がかかりますので、それが最大のネックになります。