悩ましい2020年の株主総会
新型コロナウイルスの感染拡大防止が呼びかけられており、特に三つの「密」を避けるよう呼びかけられています。
企業規模によっては、それなりに人が株主総会に集まりますので、感染リスクが否定できません。
2020年の株主総会はどうしたらよいのか簡単にご紹介します。
株主の数が少ない場合
株主が1人だとかせいぜい数名の会社では、そもそも株主総会自体を開いていないところも多いと思います。
総会を開くという意識がないことが多いからだとは思いますが、法的な裏付けもあります。
というのも、株主が全員同意すれば、株主総会の開催自体が省略できるためです。
そのため、親族外の株主がいて、毎年株主総会を開催しているような会社でも、今年については株主全員の同意を取り付けて、感染リスクのある株主総会の開催を回避することを検討してみてもいいでしょう。
もちろん、人数が少なければ、株主総会も会議室で行う程度ですので、感染防止策をとった上で開催することも考えられます。
株主の数が多い場合
株主総会の開催を省略するためには、株主全員の同意が必要です。
そのため、株主の数が多く、全員の同意が事実上得られない会社の場合には、株主総会の開催を省略することができません。
株主総会の延期
会社法との関係では、法務省の「定時株主総会の開催について」のページが出ています。
会社法296条1項は、「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。」と規定しているだけですので、2か月以内とか3か月以内に開催しなければならないとはしていません。また、定款に2か月以内に開催する旨等が記載されていたとしても、開催できなければ延期するのもやむを得ないということですね。
ただ、法人税は原則として事業年度終了の日から2か月以内に申告と納付をする必要があります。
法人税の申告は、株主総会の承認を得た決算書に基づき行わなければなりません。
そのため、株主総会が開催できないと法人税の申告もできないことになります。
私は、法務省の上記のページを見たときに、税法上の問題がクリアーされなければ、如何ともしがたいだろうと思っていましたが、その後、国税庁のページに「国税における新型コロナウイルス感染拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」が掲載されました。
9ページに記載がありますが、
「感染症の拡大防止のために多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと」を理由として、申告・納付ができない場合には、申請すれば、申告期限等の延長を認めるということです。
そのため、手続は採る必要がありますが、それをすれば、株主総会を延期して感染が収まったときに開催することもできます。
開催する場合
開催する場合でも、書面や電磁的方法による議決権行使を推奨したり、委任状の提出を勧奨することで、実際に会場に来場する人を少なくすることが考えられます。
また、出席を控えるよう呼びかけることも可能です。
4月2日に経済産業省と法務省の連名で「株主総会運営に係るQ&A」が発表されています。参考になります。