宛名のない領収書を経費にできるか?

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

宛名のない領収書を経費にできるか?

飲食店などで領収書をもらうときに「上様」と書かれていたり、宛名が書いてなかったりする場合があります。

その場合、一つずつ宛名を書かないと問題なのでしょうか。

所得税上の取扱い

所得を計算する上で経費として引けるかどうかは、その支出が「必要経費」に当たるかどうかが問題となります。

必要経費かどうかは、「客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ業務の遂行上通常必要な支出であることを要し、その判断は当該事業の業務内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って実質的に行う必要がある」とされています。

そうすると、飲食費なり交際費なりが事業との関係で必要なのかどうかなどが問題となるのであり、領収書の宛名は決定的な意味を持ちません。

プライベートの支出が領収書の宛名がその人が営んでいる屋号(私の場合「永井敦史法律事務所」「永井敦史税理士事務所」)になっているからと言って、経費にできるようになるわけではありません。

逆に、必要経費になるべき支出であれば、領収書に宛名がなかったとしてもそれだけで経費にできなくなるわけではありません。

国税不服審判所の裁決事例の中に次のような裁決をした事例があります。

「請求人は、本件支出が業務に関連するものであるから、必要経費に当たると主張し、一方、原処分庁は、飲食等に係る領収書のあて名がいずれも「上様」か記載がないことから、請求人が実際に支払ったものか不明であり、事業のために支出することが確認できない旨主張する。しかしながら、領収書のあて名を上様又は空白で発行することは通常あり得ることであり、請求人の記帳状況等及び当該支出を行った従業員の答述内容等を総合的にみると、請求人の事業の遂行上必要性があって支出したものであると推認できる。したがって、当該支出は、必要経費に算入するのが相当である。

消費税上の取扱い

消費税は、所得税とは異なり、領収書の記載を重視しています。

消費税法は、仕入税額控除のため、領収書に次の事項を記載することを求めています。

① 領収書の発行者の氏名
② 年月日
③ 商品・サービスの内容
④ 金額
⑤ 領収書を受け取った者の氏名
(軽減税率が適用される場合には、他にも記載事項がありますが、ここでは割愛します。)

ただ、例外があり、次のようなところから受け取る領収書は、⑤を記載する必要がないとされています。つまり、宛名のない領収書でも問題ありません。

① 小売店(コンビニ、スーパーなど)、飲食店、写真、旅行
② バス、電車
③ コインパーキングなど
④ 不特定かつ多数の者に商品の販売やサービスの提供を行うもの

現金で購入する場合には、このような例外に当たる場合が多いと思います。

まとめ

領収書の宛名について簡単に説明しました。

領収書の宛名が消費税法上意味を持つときもありますが、そのような形式的なことよろも、それが事業の遂行で必要なものだったかどうかという実質の方が重要です。

飲食店の領収書などはそれ自体からは仕事に必要なものかどうか分かりません。

交際費とするなら、一緒に食事をした人の名前や目的などを領収書の裏に書いたりして記録に残すことが重要です。



著者について

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