月別アーカイブ 12月 2019

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

元農水事務次官の殺人事件についての雑感

執行猶予は現在の量刑相場では難しい

元農林水産省の事務次官まで務めた人が殺人を犯したということで世間の注目を集めた事件の判決が言い渡されました。

判決は懲役6年。

この事件が発生して報道されたころから、弁護士としての経験上、執行猶予をつけるのは難しい事件だと思っていました。

殺人罪は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。

他方、執行猶予は、3年以下でなければつけることができません。

そうすると、そもそも殺人罪では執行猶予をつけることができないように思えます。

しかし、刑法に「酌量減刑」というのがあり、これを適用すると、刑の下限を半分まで下げることができます。

殺人罪の場合、2年6月まで下げられます。

つまり、殺人罪で、酌量減刑を適用して、言い渡す刑が2年6月~3年の間に収まっていれば、執行猶予が付く可能性はあります。

ただ、殺人罪が5年以上の懲役としている以上、殺人罪は原則として実刑であると法は考えているということになります。

その中で、なお、執行猶予を付すというのは、例外中の例外ということになるので、法律家の感覚ではかなりハードルが高いです。

よい条件が全て揃って、かろうじて、という感じです。

そうなってくると、凶器を使って、何か所も刺したとなると、殺し方の残忍性がある方向の事情になります。執行猶予を付すという観点ではかなりのマイナスの事情です。

懲役6年というのが重いという評価はありえるかもしれませんが、執行猶予が付かなかったのは、今の裁判の量刑相場を念頭に置くと致し方ないという感じがします。

じゃあどうすればよかったのか?

介護で疲れ果てて、咄嗟に殴って殺してしまったといった事件が起きるたびに他人事ではないと言われます。

じゃあ、どうすればよかったのか? という話になります。

警察や福祉機関などに相談すればよかったというのも、この手の事件が起きると常に言われることです。

ただ、相談して何ができるのかと言われると、発達障害などが根本的に治るわけではなく、心許ない面は否定できません。

精神障害を抱えている人一般が危険だというのは、誤った認識ですが、ごく一部ですが攻撃性が強い人がいるのも、また事実です。

人間は本能的に自分より強いものを恐れますので、家庭内の立場の弱い人に攻撃性が向けられることがあります。

そうなると、家族はどうしたらよいのかという八方ふさがりの心境に陥ってしまいます。

私は、少し前になりますが、攻撃性が強い精神障害の方の弁護を担当したことがあり、家族からも話を聞きました。家族の苦悩は大きいです。

このような経験があると、似たような事件が起きたときに、じゃあ、どうすればよかったのか?との問いに、色々相談すればよかったのではないかとは軽々しく答えることはできません。

非常に難しい。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

宛名のない領収書を経費にできるか?

飲食店などで領収書をもらうときに「上様」と書かれていたり、宛名が書いてなかったりする場合があります。

その場合、一つずつ宛名を書かないと問題なのでしょうか。

所得税上の取扱い

所得を計算する上で経費として引けるかどうかは、その支出が「必要経費」に当たるかどうかが問題となります。

必要経費かどうかは、「客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ業務の遂行上通常必要な支出であることを要し、その判断は当該事業の業務内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って実質的に行う必要がある」とされています。

そうすると、飲食費なり交際費なりが事業との関係で必要なのかどうかなどが問題となるのであり、領収書の宛名は決定的な意味を持ちません。

プライベートの支出が領収書の宛名がその人が営んでいる屋号(私の場合「永井敦史法律事務所」「永井敦史税理士事務所」)になっているからと言って、経費にできるようになるわけではありません。

逆に、必要経費になるべき支出であれば、領収書に宛名がなかったとしてもそれだけで経費にできなくなるわけではありません。

国税不服審判所の裁決事例の中に次のような裁決をした事例があります。

「請求人は、本件支出が業務に関連するものであるから、必要経費に当たると主張し、一方、原処分庁は、飲食等に係る領収書のあて名がいずれも「上様」か記載がないことから、請求人が実際に支払ったものか不明であり、事業のために支出することが確認できない旨主張する。しかしながら、領収書のあて名を上様又は空白で発行することは通常あり得ることであり、請求人の記帳状況等及び当該支出を行った従業員の答述内容等を総合的にみると、請求人の事業の遂行上必要性があって支出したものであると推認できる。したがって、当該支出は、必要経費に算入するのが相当である。

消費税上の取扱い

消費税は、所得税とは異なり、領収書の記載を重視しています。

消費税法は、仕入税額控除のため、領収書に次の事項を記載することを求めています。

① 領収書の発行者の氏名
② 年月日
③ 商品・サービスの内容
④ 金額
⑤ 領収書を受け取った者の氏名
(軽減税率が適用される場合には、他にも記載事項がありますが、ここでは割愛します。)

ただ、例外があり、次のようなところから受け取る領収書は、⑤を記載する必要がないとされています。つまり、宛名のない領収書でも問題ありません。

① 小売店(コンビニ、スーパーなど)、飲食店、写真、旅行
② バス、電車
③ コインパーキングなど
④ 不特定かつ多数の者に商品の販売やサービスの提供を行うもの

現金で購入する場合には、このような例外に当たる場合が多いと思います。

まとめ

領収書の宛名について簡単に説明しました。

領収書の宛名が消費税法上意味を持つときもありますが、そのような形式的なことよろも、それが事業の遂行で必要なものだったかどうかという実質の方が重要です。

飲食店の領収書などはそれ自体からは仕事に必要なものかどうか分かりません。

交際費とするなら、一緒に食事をした人の名前や目的などを領収書の裏に書いたりして記録に残すことが重要です。



著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

住民税について「納期の特例」を受けている場合の電子納税の仕方

納期の特例とは?

従業員を雇っている場合、月々の給料から従業員の住民税を預かり、それを納付する必要があります(特別徴収)。

毎月の給料から徴収し、翌月に納付するのが原則ですが、従業員数が少ない雇い主にとっては、少額の住民税を毎月納付するのは手間です。

そこで、半年分をまとめて納付することができる特例があります。これを「納期の特例」と呼んでいます。

電子納税の流れ

eLTAX(2019年10月1日からリニューアルされています)を利用すると、インターネットバンキングを利用して住民税の特別徴収分を納付することができます。

これから私のような個人事業主がeLTAXを利用して住民税の特別徴収分を電子納税する流れを説明します。

① 納付情報の発行依頼

インターネットバンキングを利用して納税するためには、収納機関番号、納付番号、確認番号、納付区分について、それぞれ番号が必要になります。

そのため、これらを納付情報の発行依頼をして番号を入手するのが第1ステップになります。

具体的な流れは以下のとおりです。なお、画面はPCdesk(DL版)です。

メインメニュー:納税に関する手続きをクリック
       (その後、ログインする画面があります)

納税メニュー:個人住民税(特徴)をクリック

 

納付情報作成方法:手入力による作成をクリック(手入力の場合を解説します)

納付・納入金額一覧:必須項目を入力した後、下の「明細追加」をクリック

明細情報入力(個人住民税(特徴))

毎月住民税を納付する原則的な納付方法の場合、「納入対象年月」を選び、右下にある「納付・納入金額入力」をクリックします。

すると、「納付・納入金額内訳」が出てきますので、納入金額を決めれば、あとは順調に進めます。

「納期の特例」を受けている場合、「令和元年6月分から令和元年11月分」といった通知が来ているはずです。この場合、明細情報入力(個人住民税(特徴))ところをどうするかですが、6か月分を一つずつ入力していくことになります。

つまり、納入対象年月で「令和元年6月」を選択し、「納付・納入金額入力」に進んで金額を確定すると、納付・納入金額一覧の画面に戻り、「納付・納入金額入力(明細)」欄の「納付対象年月」に「R1/06」と出てきます。

それに続いて、明細を追加していきます。今度は、明細情報入力(個人住民税(特徴))のページの「納入対象年月」で「令和元年7月」を選択し、同様に「納付・納入金額入力」に進んで金額を確定します。

結局この作業を6か月分繰り返していきます。

その後、画面に従って作業を続けると、納付情報の発行依頼ができます。

 納付情報の確認

納税メニュー:納付情報の確認・納付をクリック

その後、画面を進めていくと、収納機関番号、納付番号、確認番号、納付区分のそれぞれの番号が分かります。

あとは、お使いのインタネットバンキングを利用して納付するだけです。

まとめ

納期の特例を受けている場合は、住民税の特別徴収分を納付するのも年2回だけですので、電子納税の作業をするよりも銀行に行った方が早いかもしれません。

ただ、電子納税だと銀行の営業時間を気にする必要はないので、その意味では便利かもしれません。

ご参考までに。