人が亡くなったら、相続が開始します。
相続人は、相続するか、相続しないかを決めなければなりません。
相続しないという場合に「相続放棄」をすることになります。
相続放棄を選ぶことが多いケース
私の経験上、次のような方が相続放棄を選ばれることが多いと感じています。
● 亡くなった方が多額の借金を残した
相続すると、土地や預貯金といったプラスの財産だけではなく、借金といういわばマイナスの財産も相続します。
そのため、相続すると損をする場合には、相続放棄をすることを選択されることが多いです。
● 亡くなった方と疎遠のため、相続にかかわりたくない
両親が離婚をして、父親とは何十年も連絡すら取っていないという方がいらっしゃいます。そのような方が、警察などから父親が亡くなったことを知らされるというケースがあります。
ただ、もう何十年も連絡すら取っておらず、自分も働いていて生活も安定しているので、父親の相続に関わりたくないということもまま見られます。
● 兄弟姉妹と仲が悪く、相続にかかわりたくない
相続にかかわりたくないといっても、上記とは別の理由。兄弟姉妹と仲が悪いので、相続にかかわりたくないという方もいらっしゃいます。
家庭裁判所で手続をしなければ、相続放棄をしたことになりません
たまに、自分は財産をもらっていないので、相続を放棄したと思っておられる方がいます。
しかし、法律上は、相続放棄は、家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要があります。
そのため、家庭裁判所で手続をしなければ、相続放棄をしたことにはなりません。
ちなみに、亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所で相続放棄の手続をすることになります。自分の住所を管轄する家庭裁判所ではありませんので、ご注意ください。
相続放棄は3か月以内に行う必要があります
相続放棄は、原則として相続の開始があったことを知った日から3か月以内に行う必要があります。
相続開始があったことを知った日というのがいつかが問題ですが、子や配偶者など、第1順位で相続人となる場合は、被相続人が亡くなったことを知った日が相続開始があったことを知った日となります。
第1順位の相続人が全員相続放棄をしたことで、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹)の方が相続人になるケースがあります。その場合は、第1順位の相続人が相続放棄をして、自分に相続の順位が回ってきたことを知った日が相続開始があったことを知った日になります。
相続財産を使ってしまうと、相続放棄ができなくなる
注意すべきところですが、被相続人の預貯金などを引き出して使ってしまってから、相続放棄をすることはできません。
それは、被相続人の預貯金を引き出したりすることは、相続をすることを選んだものとみなされるからです。
ただ、何がいいのか、いけないのかの判断は微妙なところもありますので、迷ったらご相談ください。
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