月別アーカイブ 4月 2019

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

源泉徴収票を確定申告書に添付しなくてよくなりました

平成31年度の税制改正により、平成31年4月1日以降に提出する確定申告書に給与所得の源泉徴収票や公的年金等の源泉徴収票を添付することが不要となりました

今年の確定申告の期限は既に過ぎていますので、多くの方にとっては令和2年の際の確定申告に影響することになります。

書面申告をする場合には、添付書類として生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書などほかにもありますので、一部の書類の添付不要となっても負担感はさほど減らないかもしれません。

この改正により、源泉徴収票を必ずしも紙で発行しなくて済むため、企業側にとってメリットの大きい改正事項といえるでしょう。

源泉徴収票が発行されなかったら、どうするか?

源泉徴収票のことを書いたついでに今年の確定申告で経験したことを一つ。

昨年の途中で勤務先を退職したが、そこから源泉徴収票が発行されないけど、どうしたらよいかという相談を受けました。

源泉徴収票がないと、給料から厚生年金保険料や健康保険料をいくら引かれているのか、所得税がいくら源泉徴収されているのかが分からないので、申告をするときに困ります。

税務署側にこのような場合にどうするのかを尋ねたら、とりあえず申告書を出してくれとの回答でした。

その方はある程度給与明細書があったので、それから分かる数字を拾って申告書を作成し、申告書には給与明細書の写しを添付しました。

そしたら、先日、還付の案内のハガキが税務署から届いたようです。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正②

相続開始後・遺産分割前に遺産が使われた場合

被相続人が亡くなったことを銀行に知らせるとお金を引き出すことができなくなるということで、亡くなった後もすぐに銀行には知らせず、その間にATMで預金を引き出すということは、しばしば見かけます。

葬式費用程度であれば、特段問題がないことが多いのですが、中には多額のお金を自分の生活費や借金の返済に充てる相続人がいたりします。

このように、被相続人が亡くなったときにはあったが、今はないものをどう扱ったらいいのか

例えば、被相続人が死亡したときには1000万円あった預金が、遺産分割の話し合いをしようとしたときには400万円になっていたとしましょう。

他の相続人は、元々1000万円あったのだから、1000万円を分けようと思うでしょうが、家庭裁判所の常識は、「遺産分割は今ある財産を分ける手続きだから、今ある400万円を分けることしかできません。もし、600万円はある相続人Aが使い込んだと言われるのであれば、それは直接Aに返せという裁判を別個やってください。」というものです。

家庭裁判所の言うことも一理あるとは思うのですが、別個裁判をするというのは、弁護士費用の負担が大きいという問題があります。そうでなくても、遺産の問題がなかなか解決しないということにもなります。

そこで、今回の改正により、共同相続人の中に相続開始後・遺産分割前に遺産を処分した(典型的には預金を引き出した)相続人がいる場合には、その相続人以外の相続人全員が同意すれば、その処分された遺産があるとみなして遺産分割協議をすることができるようになりました

【写真】4月上旬に内海にある某ホテルから撮影したもの

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正①

昨年、民法の相続分野の改正がなされました。本格的に改正されたのは、配偶者の法定相続分が2分の1となった昭和55年改正以来のことです。

今回の改正は多岐に亘ります。

そこで、これから何回かに分けて、改正された部分をご紹介します。

なお、改正法の施行時期は、原則として2019年7月1日からです。

遺留分

遺留分の金銭請求化

これまでは遺留分侵害があっても、それを金銭で支払うように請求する権利があったわけではありませんでした。

そのため、不動産のようなモノで遺留分侵害額が補われるということもありえました。

今回の改正で、遺留分侵害があった場合には、金銭請求をすることに一本化されました。

今までの遺留分の権利は、かなり分かりづらく、我々弁護士が説明をするのもかなり苦労していました。

今回の改正により、遺留分侵害があった場合には、遺留分侵害額をお金で請求することができるというように単純化されましたので、一般の方には分かりやすい改正になったといえます。

反面、遺言を書く場合は要注意です。現金・預金があまりなく、遺言で遺贈するとした財産の大半が不動産の場合、遺留分侵害請求がなされると、金銭で渡さなければなりませんので、そのお金をどのように用意するかという問題が生じます。

これまでも同様の問題はありましたが、今回の改正で金銭請求権であると明記されたことを考慮に入れて、遺言の内容を検討する必要があります。

あと、遺留分侵害請求権を行使しても多額のお金がない場合には、話し合いにより、不動産を遺留分を主張する人に戻すことはこれからもあると思います。

実は、遺留分が金銭債権に一本化されたために、相続人同士の話し合いにより不動産を戻すことにするというのは、一種の代物弁済になります。
そのため、不動産を譲渡したことになり、譲渡所得(又は損失)が発生するということです。

この点は、税理士としては、言われてみれば・・・という感じですが、先日行われた税理士会の研修で指摘されるまで正直気が付きませんでした。

遺留分の計算方法の見直し

これはやや専門的な改正事項になります。

被相続人が生前に贈与をしていたときには、それを一部遺留分の算定の上で考慮しなければなりません。

相続人以外の者への贈与の場合は、原則として亡くなる前1年間だけを考慮すれば足ります。

これに対し、親が子に贈与する場合が典型ですが、相続人への贈与は、原則としてこれまでは時期にかかわらず、遺留分を算定するときに考慮することになっていました。

言い換えると、かなり昔の贈与でも遺留分を計算するときに持ち出される可能性がありました。

ただ、子どもが住宅を購入するときに親が購入代金の一部を負担したり、子の借金を親が支払ったりすることは、しばしばあります。

そのため、親が亡くなったときに、姉は住宅を購入するときに1000万円を出してもらったが、自分はもらっていないなどといったことが遺留分の場面で出てきていました。

私も弁護士としてそのように言われたときは証拠があるのかということを尋ねて確認していました。

遺留分を争ったときに、相手から依頼者が被相続人から贈与を受けていると主張されたこともありますが、そのときに主張された贈与がかなり古いものであったため、余りに古い贈与を持ち出されることに違和感を覚えていました。
また、かなり以前のものを主張されても、本人の記憶も曖昧になっていることもしばしばで、遺留分の紛争が長期化する要因にもなっていたと思います。

そこで、今回の改正で、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年前にしたものに限定されることになりました

 

【写真】3月31日撮影の大高緑地公園の桜