平成31年も早くも1月が過ぎ去ろうとしており、平成もいよいよ終わりに近いています。
さて、天皇の退位と税金というちょっと変わった言葉の組み合わせのお話です。
実は相続税法に面白い規定があります。
相続税法の非課税財産
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
「皇位とともに皇嗣が受けた物」とは一体何だと思われると思いますが、いわゆる三種の神器がこれに当たると考えられているようです。
私はよく存じませんが、天皇が崩御して、新しい天皇が即位するときには、それに伴って、三種の神器も引き継ぐことになるんでしょうね。
ただ、それは天皇の死亡により取得することになったのだから、相続財産であり、相続税がかかるのではないかが問題になりえます。
そのような疑問に対処したのが相続税法12条で、そのようなものは非課税として相続税を課さないとしています。
三種の神器に贈与税がかかる?
さて、今年の5月に予定されている退位は、天皇の崩御に伴うものではありません。
今の天皇から皇太子様が三種の神器を譲り受けたとすると、これは人の死亡に伴うものではないので、相続ではありません。
贈与になります。
贈与の場合にも非課税財産がありますが、「皇位とともに皇嗣が受けた物」を非課税とする規定は相続税法にはありません。
先の相続税法12条の規定は「相続」のときに適用がある条文で、「贈与」のときには適用がありません。
そうすると、今回の退位によって、三種の神器を譲り受けると、贈与税がかかるのかという問題が生じ得ます。
実は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の附則7条に次のような規定があります。
第二条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物は贈与税を課さない。
この規定によって、今回の退位のときにも三種の神器には贈与税が課せられないということになるのです。
法律にはこのようなことまで書かれているのですね。
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