年別アーカイブ 2019

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

元農水事務次官の殺人事件についての雑感

執行猶予は現在の量刑相場では難しい

元農林水産省の事務次官まで務めた人が殺人を犯したということで世間の注目を集めた事件の判決が言い渡されました。

判決は懲役6年。

この事件が発生して報道されたころから、弁護士としての経験上、執行猶予をつけるのは難しい事件だと思っていました。

殺人罪は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。

他方、執行猶予は、3年以下でなければつけることができません。

そうすると、そもそも殺人罪では執行猶予をつけることができないように思えます。

しかし、刑法に「酌量減刑」というのがあり、これを適用すると、刑の下限を半分まで下げることができます。

殺人罪の場合、2年6月まで下げられます。

つまり、殺人罪で、酌量減刑を適用して、言い渡す刑が2年6月~3年の間に収まっていれば、執行猶予が付く可能性はあります。

ただ、殺人罪が5年以上の懲役としている以上、殺人罪は原則として実刑であると法は考えているということになります。

その中で、なお、執行猶予を付すというのは、例外中の例外ということになるので、法律家の感覚ではかなりハードルが高いです。

よい条件が全て揃って、かろうじて、という感じです。

そうなってくると、凶器を使って、何か所も刺したとなると、殺し方の残忍性がある方向の事情になります。執行猶予を付すという観点ではかなりのマイナスの事情です。

懲役6年というのが重いという評価はありえるかもしれませんが、執行猶予が付かなかったのは、今の裁判の量刑相場を念頭に置くと致し方ないという感じがします。

じゃあどうすればよかったのか?

介護で疲れ果てて、咄嗟に殴って殺してしまったといった事件が起きるたびに他人事ではないと言われます。

じゃあ、どうすればよかったのか? という話になります。

警察や福祉機関などに相談すればよかったというのも、この手の事件が起きると常に言われることです。

ただ、相談して何ができるのかと言われると、発達障害などが根本的に治るわけではなく、心許ない面は否定できません。

精神障害を抱えている人一般が危険だというのは、誤った認識ですが、ごく一部ですが攻撃性が強い人がいるのも、また事実です。

人間は本能的に自分より強いものを恐れますので、家庭内の立場の弱い人に攻撃性が向けられることがあります。

そうなると、家族はどうしたらよいのかという八方ふさがりの心境に陥ってしまいます。

私は、少し前になりますが、攻撃性が強い精神障害の方の弁護を担当したことがあり、家族からも話を聞きました。家族の苦悩は大きいです。

このような経験があると、似たような事件が起きたときに、じゃあ、どうすればよかったのか?との問いに、色々相談すればよかったのではないかとは軽々しく答えることはできません。

非常に難しい。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

宛名のない領収書を経費にできるか?

飲食店などで領収書をもらうときに「上様」と書かれていたり、宛名が書いてなかったりする場合があります。

その場合、一つずつ宛名を書かないと問題なのでしょうか。

所得税上の取扱い

所得を計算する上で経費として引けるかどうかは、その支出が「必要経費」に当たるかどうかが問題となります。

必要経費かどうかは、「客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ業務の遂行上通常必要な支出であることを要し、その判断は当該事業の業務内容等個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って実質的に行う必要がある」とされています。

そうすると、飲食費なり交際費なりが事業との関係で必要なのかどうかなどが問題となるのであり、領収書の宛名は決定的な意味を持ちません。

プライベートの支出が領収書の宛名がその人が営んでいる屋号(私の場合「永井敦史法律事務所」「永井敦史税理士事務所」)になっているからと言って、経費にできるようになるわけではありません。

逆に、必要経費になるべき支出であれば、領収書に宛名がなかったとしてもそれだけで経費にできなくなるわけではありません。

国税不服審判所の裁決事例の中に次のような裁決をした事例があります。

「請求人は、本件支出が業務に関連するものであるから、必要経費に当たると主張し、一方、原処分庁は、飲食等に係る領収書のあて名がいずれも「上様」か記載がないことから、請求人が実際に支払ったものか不明であり、事業のために支出することが確認できない旨主張する。しかしながら、領収書のあて名を上様又は空白で発行することは通常あり得ることであり、請求人の記帳状況等及び当該支出を行った従業員の答述内容等を総合的にみると、請求人の事業の遂行上必要性があって支出したものであると推認できる。したがって、当該支出は、必要経費に算入するのが相当である。

消費税上の取扱い

消費税は、所得税とは異なり、領収書の記載を重視しています。

消費税法は、仕入税額控除のため、領収書に次の事項を記載することを求めています。

① 領収書の発行者の氏名
② 年月日
③ 商品・サービスの内容
④ 金額
⑤ 領収書を受け取った者の氏名
(軽減税率が適用される場合には、他にも記載事項がありますが、ここでは割愛します。)

ただ、例外があり、次のようなところから受け取る領収書は、⑤を記載する必要がないとされています。つまり、宛名のない領収書でも問題ありません。

① 小売店(コンビニ、スーパーなど)、飲食店、写真、旅行
② バス、電車
③ コインパーキングなど
④ 不特定かつ多数の者に商品の販売やサービスの提供を行うもの

現金で購入する場合には、このような例外に当たる場合が多いと思います。

まとめ

領収書の宛名について簡単に説明しました。

領収書の宛名が消費税法上意味を持つときもありますが、そのような形式的なことよろも、それが事業の遂行で必要なものだったかどうかという実質の方が重要です。

飲食店の領収書などはそれ自体からは仕事に必要なものかどうか分かりません。

交際費とするなら、一緒に食事をした人の名前や目的などを領収書の裏に書いたりして記録に残すことが重要です。



著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

住民税について「納期の特例」を受けている場合の電子納税の仕方

納期の特例とは?

従業員を雇っている場合、月々の給料から従業員の住民税を預かり、それを納付する必要があります(特別徴収)。

毎月の給料から徴収し、翌月に納付するのが原則ですが、従業員数が少ない雇い主にとっては、少額の住民税を毎月納付するのは手間です。

そこで、半年分をまとめて納付することができる特例があります。これを「納期の特例」と呼んでいます。

電子納税の流れ

eLTAX(2019年10月1日からリニューアルされています)を利用すると、インターネットバンキングを利用して住民税の特別徴収分を納付することができます。

これから私のような個人事業主がeLTAXを利用して住民税の特別徴収分を電子納税する流れを説明します。

① 納付情報の発行依頼

インターネットバンキングを利用して納税するためには、収納機関番号、納付番号、確認番号、納付区分について、それぞれ番号が必要になります。

そのため、これらを納付情報の発行依頼をして番号を入手するのが第1ステップになります。

具体的な流れは以下のとおりです。なお、画面はPCdesk(DL版)です。

メインメニュー:納税に関する手続きをクリック
       (その後、ログインする画面があります)

納税メニュー:個人住民税(特徴)をクリック

 

納付情報作成方法:手入力による作成をクリック(手入力の場合を解説します)

納付・納入金額一覧:必須項目を入力した後、下の「明細追加」をクリック

明細情報入力(個人住民税(特徴))

毎月住民税を納付する原則的な納付方法の場合、「納入対象年月」を選び、右下にある「納付・納入金額入力」をクリックします。

すると、「納付・納入金額内訳」が出てきますので、納入金額を決めれば、あとは順調に進めます。

「納期の特例」を受けている場合、「令和元年6月分から令和元年11月分」といった通知が来ているはずです。この場合、明細情報入力(個人住民税(特徴))ところをどうするかですが、6か月分を一つずつ入力していくことになります。

つまり、納入対象年月で「令和元年6月」を選択し、「納付・納入金額入力」に進んで金額を確定すると、納付・納入金額一覧の画面に戻り、「納付・納入金額入力(明細)」欄の「納付対象年月」に「R1/06」と出てきます。

それに続いて、明細を追加していきます。今度は、明細情報入力(個人住民税(特徴))のページの「納入対象年月」で「令和元年7月」を選択し、同様に「納付・納入金額入力」に進んで金額を確定します。

結局この作業を6か月分繰り返していきます。

その後、画面に従って作業を続けると、納付情報の発行依頼ができます。

 納付情報の確認

納税メニュー:納付情報の確認・納付をクリック

その後、画面を進めていくと、収納機関番号、納付番号、確認番号、納付区分のそれぞれの番号が分かります。

あとは、お使いのインタネットバンキングを利用して納付するだけです。

まとめ

納期の特例を受けている場合は、住民税の特別徴収分を納付するのも年2回だけですので、電子納税の作業をするよりも銀行に行った方が早いかもしれません。

ただ、電子納税だと銀行の営業時間を気にする必要はないので、その意味では便利かもしれません。

ご参考までに。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

近年急増!弁護士費用特約を利用しての交通事故の示談交渉の依頼

私も交通事故の案件は常に抱えている案件の一つです。

とはいっても常時抱えているのは数件です。おそらく、弁護士で一番交通事故を扱っているのは保険会社の顧問弁護士でしょう。保険会社の顧問弁護士は何十件もの交通事故案件を同時に抱えているようです。

私が弁護士になって約12年経ちましたが、私が弁護士になったころと最近では少し異なっている点があります。

それは、自動車保険などの特約である弁護士費用特約を付される方が多くなったことです。

私が弁護士になったころも、弁護士費用特約自体は特約としてありましたが、必ずしも利用されている方は多くなかったという印象です。割と着手金は直接依頼者の方が支払われていましたし、軽い交通事故では弁護士費用がいくらかかるかと聞いて、諦めて泣き寝入りする方も少なくありませんでした。

やはり、弁護士の数が増えて、ホームページが増えたり、テレビドラマでも弁護士が扱われることが多くなったり、スマートホンが普及して情報を得る機会が多くなったなどの影響でしょうか。弁護士費用特約を付けており、弁護士費用特約を利用される方が多くなりました。

そのため、最近は、弁護士会から弁護士費用特約を使って弁護士を頼みたいという人がいると紹介を受けて、交通事故の案件の依頼を受けることが大半となりました。

また、特約の利用が増えたことにより、裁判所でも交通事故の事件は増えているようです。交通事故の件数自体は激減しているのに、裁判所で扱われる事件が増えているという奇妙な現象が起きているのは、弁護士費用特約が普及したからにほかなりません。

そういえば、先日、刑事事件の被告人に面会するため、警察署に行きました。警察署には、たいがい入り口に県内に発生の交通事故の件数が何件が出ていますが、今年の愛知県の交通事故死者数は昨年よりもさらに減りそうです。愛知県はずっと1年間の交通事故死者数が200人を超えていましたが、平成30年は昭和25年以来68年ぶりに200人を下回りました。今年はさらに少なくなりそうです。

なぜ、こんなに激減しているのかはよく分かりませんが、飲酒運転の厳罰化や高齢者の免許返納、車の安全性能の向上などの要因が重なったということでしょう。交通事故で怪我をすると後遺症が一生残りますので、交通事故が減っているということは大変いいことだと思います。

弁護士費用特約の普及により、割と軽微な交通事故でも弁護士に示談交渉を利用されることが多くなっています。私が弁護士になったころ、物損のみの示談交渉は依頼を受けたという記憶がないのですが、最近は物損のみを依頼を受けるということも増えています。

人口が減り、車を持たない若い人も増えているみたいですので、交通事故の件数自体は今後も減り続けるでしょう。将来的には自動運転により、交通事故自体がほとんどなくなるような時代が来るのかもしれません。そうなると、弁護士が交通事故を扱うということもなくなるのでしょう。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

相続したくなかったら、相続放棄をしましょう!

人が亡くなったら、相続が開始します。

相続人は、相続するか、相続しないかを決めなければなりません。

相続しないという場合に「相続放棄」をすることになります。

相続放棄を選ぶことが多いケース

私の経験上、次のような方が相続放棄を選ばれることが多いと感じています。

● 亡くなった方が多額の借金を残した

  相続すると、土地や預貯金といったプラスの財産だけではなく、借金といういわばマイナスの財産も相続します。
そのため、相続すると損をする場合には、相続放棄をすることを選択されることが多いです。

● 亡くなった方と疎遠のため、相続にかかわりたくない

  両親が離婚をして、父親とは何十年も連絡すら取っていないという方がいらっしゃいます。そのような方が、警察などから父親が亡くなったことを知らされるというケースがあります。
ただ、もう何十年も連絡すら取っておらず、自分も働いていて生活も安定しているので、父親の相続に関わりたくないということもまま見られます。

 兄弟姉妹と仲が悪く、相続にかかわりたくない

  相続にかかわりたくないといっても、上記とは別の理由。兄弟姉妹と仲が悪いので、相続にかかわりたくないという方もいらっしゃいます。

家庭裁判所で手続をしなければ、相続放棄をしたことになりません

たまに、自分は財産をもらっていないので、相続を放棄したと思っておられる方がいます。

しかし、法律上は、相続放棄は、家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要があります。

そのため、家庭裁判所で手続をしなければ、相続放棄をしたことにはなりません。

ちなみに、亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所で相続放棄の手続をすることになります。自分の住所を管轄する家庭裁判所ではありませんので、ご注意ください。

相続放棄は3か月以内に行う必要があります

相続放棄は、原則として相続の開始があったことを知った日から3か月以内に行う必要があります。

相続開始があったことを知った日というのがいつかが問題ですが、子や配偶者など、第1順位で相続人となる場合は、被相続人が亡くなったことを知った日が相続開始があったことを知った日となります。

第1順位の相続人が全員相続放棄をしたことで、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹)の方が相続人になるケースがあります。その場合は、第1順位の相続人が相続放棄をして、自分に相続の順位が回ってきたことを知った日が相続開始があったことを知った日になります。

相続財産を使ってしまうと、相続放棄ができなくなる

注意すべきところですが、被相続人の預貯金などを引き出して使ってしまってから、相続放棄をすることはできません

それは、被相続人の預貯金を引き出したりすることは、相続をすることを選んだものとみなされるからです。

ただ、何がいいのか、いけないのかの判断は微妙なところもありますので、迷ったらご相談ください。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

会社にする税金面でのメリット・デメリット

税理士をしていると、たまに聞かれるのは

個人事業主から会社形態にした方がいいのか?

という質問です。

会社を作るかどうかは、税金面以外のことを考慮しなければいけないこともあります。

例えば、建設業では、会社でないと下請けに入れないということはよくあります。

そのため、会社にした方がいいかどうかはお答えしづらい質問ではありますが、税金面のことも考慮することは大切ですので、簡単に説明をします。
(なお、網羅的に書いているわけではありません。)

会社にするメリット

税金が少なくなるケースがある

個人事業主の場合、税金を計算する基となる所得を計算するときに、経費以外に一定の条件の下で「青色申告特別控除を引くことができます。
青色申告特別控除は最大65万円です。

青色申告特別控除により、所得税、住民税さらには国民健康保険料も安くできます。

個人事業主にとってはありがたい制度ですが、言い換えれば最大で65万円しか引くことができません。

これに対し、会社形態にすると、取締役として役員報酬をもらう形になります。これは、税法上は、従業員と同じ給与所得として扱われます。

給与所得を計算するときには、総支給額から給与所得控除額を引いて計算することになります。

この給与所得控除額は最低でも65万円あります。最高で220万円です。

個人事業主のときには、65万円しか引けなかったのが、会社形態にして65万円以上引けることになります。

特に、所得税は、所得の金額が大きくなるにつれて、税率も高くなりますので、この差は大きいです。

あと、事業税も理由は異なりますが、個人事業税よりも法人事業税の方が少なくなるのが通常です。

そのため、売上から経費を差し引いた金額が多ければ、個人の税金の減少の効果が大きくなります。

会社にするデメリット

そもそもデメリットというべきではないように思うので、注意すべきということくらいに捉えてください。

支払う税金の種類が増える

個人事業主のときは、主として
① 所得税
② 住民税(個人)
③ 個人事業税
(④ 消費税)
の税金が生じることになります。

これに対して、会社の場合は、
① 法人税
② 住民税(法人)
③ 事業税(法人)
④ 所得税(役員個人)
⑤ 住民税(役員個人)
(⑥ 消費税)
を考える必要があります。

①法人税と③事業税(法人)は会社に所得がなければ発生しませんが、②の住民税(法人)は会社が赤字でもかかります(資本金の額や自治体によって異なりますが、最低でも7万円かかるのが通常です。)。

会社の売上は年によって上がったり、下がったりしますので、常に法人税がかからないようにすることはできません。

また、金融機関から融資を受けることを考えたときには、黒字の方がいいです。

会社形態にすると、個人にかかる税金は減っても、法人にかかる税金もあるので、その効果が思ったよりも少なくなるということも生じます。

厚生年金・健康保険に加入することになる

個人事業主のときは、国民年金、国民健康保険に加入しますが、会社形態にすると、従業員がおらず役員だけの場合でも、厚生年金・健康保険に加入しなければなりません。

厚生年金保険料・健康保険料は、個人事業主のときの国民年金保険料・国民健康保険料よりも通常は高くなります。

会社形態にすることで、税金が安くなっても、社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料)が高くなって、負担はそれほど変わらない、場合によっては個人事業主のままの方が負担が少ないということもあります。

もちろん、保険料が高いため、いざというときの保障は手厚いです。

例えば、健康保険には、国民健康保険にはない傷病手当金の制度があります。

何も怪我等がなくても、厚生年金の方が、受け取る年金が多くなります。今後、年金制度がどうなるかという問題はあるにしろ、メリットということもできます。

会社の維持費が生じる

会社形態とすると、それに伴い経費の負担が生じます。例えば、

・ 役員変更等で登記手続をすることがあり、登録免許税や司法書士費用が生じる。

・ 社会保険事務のため、社会保険労務士の費用が生じる。

・ 税理士費用が個人のときよりも高くなる。

といったことが通常生じます。

また、社会保険に関連しますが、社会保険の事業主負担分が生じます。

健康保険・厚生年金の保険料は、労働者と会社が折半で負担しますので、会社も負担しなければなりません。

社会保険の事業主負担分は結構大きな負担となります。

おわりに

簡単に会社にするメリット、デメリットを紹介しました。

ただ、事業は長く続きます。一旦会社にしたけど、すぐに個人事業主に戻すということはなかなか難しいですので、会社にするかどうかはよく検討していただきたいです。

※ 記事は執筆時の法律を前提としています。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

源泉徴収票を確定申告書に添付しなくてよくなりました

平成31年度の税制改正により、平成31年4月1日以降に提出する確定申告書に給与所得の源泉徴収票や公的年金等の源泉徴収票を添付することが不要となりました

今年の確定申告の期限は既に過ぎていますので、多くの方にとっては令和2年の際の確定申告に影響することになります。

書面申告をする場合には、添付書類として生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書などほかにもありますので、一部の書類の添付不要となっても負担感はさほど減らないかもしれません。

この改正により、源泉徴収票を必ずしも紙で発行しなくて済むため、企業側にとってメリットの大きい改正事項といえるでしょう。

源泉徴収票が発行されなかったら、どうするか?

源泉徴収票のことを書いたついでに今年の確定申告で経験したことを一つ。

昨年の途中で勤務先を退職したが、そこから源泉徴収票が発行されないけど、どうしたらよいかという相談を受けました。

源泉徴収票がないと、給料から厚生年金保険料や健康保険料をいくら引かれているのか、所得税がいくら源泉徴収されているのかが分からないので、申告をするときに困ります。

税務署側にこのような場合にどうするのかを尋ねたら、とりあえず申告書を出してくれとの回答でした。

その方はある程度給与明細書があったので、それから分かる数字を拾って申告書を作成し、申告書には給与明細書の写しを添付しました。

そしたら、先日、還付の案内のハガキが税務署から届いたようです。

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正②

相続開始後・遺産分割前に遺産が使われた場合

被相続人が亡くなったことを銀行に知らせるとお金を引き出すことができなくなるということで、亡くなった後もすぐに銀行には知らせず、その間にATMで預金を引き出すということは、しばしば見かけます。

葬式費用程度であれば、特段問題がないことが多いのですが、中には多額のお金を自分の生活費や借金の返済に充てる相続人がいたりします。

このように、被相続人が亡くなったときにはあったが、今はないものをどう扱ったらいいのか

例えば、被相続人が死亡したときには1000万円あった預金が、遺産分割の話し合いをしようとしたときには400万円になっていたとしましょう。

他の相続人は、元々1000万円あったのだから、1000万円を分けようと思うでしょうが、家庭裁判所の常識は、「遺産分割は今ある財産を分ける手続きだから、今ある400万円を分けることしかできません。もし、600万円はある相続人Aが使い込んだと言われるのであれば、それは直接Aに返せという裁判を別個やってください。」というものです。

家庭裁判所の言うことも一理あるとは思うのですが、別個裁判をするというのは、弁護士費用の負担が大きいという問題があります。そうでなくても、遺産の問題がなかなか解決しないということにもなります。

そこで、今回の改正により、共同相続人の中に相続開始後・遺産分割前に遺産を処分した(典型的には預金を引き出した)相続人がいる場合には、その相続人以外の相続人全員が同意すれば、その処分された遺産があるとみなして遺産分割協議をすることができるようになりました

【写真】4月上旬に内海にある某ホテルから撮影したもの

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

民法(相続法)の改正①

昨年、民法の相続分野の改正がなされました。本格的に改正されたのは、配偶者の法定相続分が2分の1となった昭和55年改正以来のことです。

今回の改正は多岐に亘ります。

そこで、これから何回かに分けて、改正された部分をご紹介します。

なお、改正法の施行時期は、原則として2019年7月1日からです。

遺留分

遺留分の金銭請求化

これまでは遺留分侵害があっても、それを金銭で支払うように請求する権利があったわけではありませんでした。

そのため、不動産のようなモノで遺留分侵害額が補われるということもありえました。

今回の改正で、遺留分侵害があった場合には、金銭請求をすることに一本化されました。

今までの遺留分の権利は、かなり分かりづらく、我々弁護士が説明をするのもかなり苦労していました。

今回の改正により、遺留分侵害があった場合には、遺留分侵害額をお金で請求することができるというように単純化されましたので、一般の方には分かりやすい改正になったといえます。

反面、遺言を書く場合は要注意です。現金・預金があまりなく、遺言で遺贈するとした財産の大半が不動産の場合、遺留分侵害請求がなされると、金銭で渡さなければなりませんので、そのお金をどのように用意するかという問題が生じます。

これまでも同様の問題はありましたが、今回の改正で金銭請求権であると明記されたことを考慮に入れて、遺言の内容を検討する必要があります。

あと、遺留分侵害請求権を行使しても多額のお金がない場合には、話し合いにより、不動産を遺留分を主張する人に戻すことはこれからもあると思います。

実は、遺留分が金銭債権に一本化されたために、相続人同士の話し合いにより不動産を戻すことにするというのは、一種の代物弁済になります。
そのため、不動産を譲渡したことになり、譲渡所得(又は損失)が発生するということです。

この点は、税理士としては、言われてみれば・・・という感じですが、先日行われた税理士会の研修で指摘されるまで正直気が付きませんでした。

遺留分の計算方法の見直し

これはやや専門的な改正事項になります。

被相続人が生前に贈与をしていたときには、それを一部遺留分の算定の上で考慮しなければなりません。

相続人以外の者への贈与の場合は、原則として亡くなる前1年間だけを考慮すれば足ります。

これに対し、親が子に贈与する場合が典型ですが、相続人への贈与は、原則としてこれまでは時期にかかわらず、遺留分を算定するときに考慮することになっていました。

言い換えると、かなり昔の贈与でも遺留分を計算するときに持ち出される可能性がありました。

ただ、子どもが住宅を購入するときに親が購入代金の一部を負担したり、子の借金を親が支払ったりすることは、しばしばあります。

そのため、親が亡くなったときに、姉は住宅を購入するときに1000万円を出してもらったが、自分はもらっていないなどといったことが遺留分の場面で出てきていました。

私も弁護士としてそのように言われたときは証拠があるのかということを尋ねて確認していました。

遺留分を争ったときに、相手から依頼者が被相続人から贈与を受けていると主張されたこともありますが、そのときに主張された贈与がかなり古いものであったため、余りに古い贈与を持ち出されることに違和感を覚えていました。
また、かなり以前のものを主張されても、本人の記憶も曖昧になっていることもしばしばで、遺留分の紛争が長期化する要因にもなっていたと思います。

そこで、今回の改正で、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年前にしたものに限定されることになりました

 

【写真】3月31日撮影の大高緑地公園の桜

著者:永井敦史税理士事務所・永井敦史法律事務所

天皇の退位と税金

平成31年も早くも1月が過ぎ去ろうとしており、平成もいよいよ終わりに近いています。

さて、天皇の退位と税金というちょっと変わった言葉の組み合わせのお話です。

実は相続税法に面白い規定があります。

相続税法の非課税財産

第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物

皇位とともに皇嗣が受けた物」とは一体何だと思われると思いますが、いわゆる三種の神器がこれに当たると考えられているようです。

私はよく存じませんが、天皇が崩御して、新しい天皇が即位するときには、それに伴って、三種の神器も引き継ぐことになるんでしょうね。

ただ、それは天皇の死亡により取得することになったのだから、相続財産であり、相続税がかかるのではないかが問題になりえます。

そのような疑問に対処したのが相続税法12条で、そのようなものは非課税として相続税を課さないとしています。

三種の神器に贈与税がかかる?

さて、今年の5月に予定されている退位は、天皇の崩御に伴うものではありません。

今の天皇から皇太子様が三種の神器を譲り受けたとすると、これは人の死亡に伴うものではないので、相続ではありません。

贈与になります。

贈与の場合にも非課税財産がありますが、「皇位とともに皇嗣が受けた物」を非課税とする規定は相続税法にはありません。

先の相続税法12条の規定は「相続」のときに適用がある条文で、「贈与」のときには適用がありません。

そうすると、今回の退位によって、三種の神器を譲り受けると、贈与税がかかるのかという問題が生じ得ます。

実は、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の附則7条に次のような規定があります。

第二条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物は贈与税を課さない。

この規定によって、今回の退位のときにも三種の神器には贈与税が課せられないということになるのです。

法律にはこのようなことまで書かれているのですね。